オットセイはスピード狂だった。どんな動物が運転する車にも負けない自信があった。付いたあだ名が『スピード・オットセイ』だ。
ある日、オットセイはレースに出た。ファンの多くが『スピード・オットセイ』に声援を贈った。
だが、丘の向こうでクラッシュ事故が起きて事故車がコースを塞いでいた。客席からそれはよく見えたがオットセイからは見えなかった。
ファン達は心配して「スピード落とせ」と叫んだ。しかし、『スピード・オットセイ』と声援されたと誤解したオットセイはアクセルを踏み込んだ。
(遠野秋彦・作 ©2011 TOHNO, Akihiko)